オーストラリアの調理・ホスピタリティ分野で、いちばん長い射程を持つコース群です。鍵になるのは ANZSCO 351311 Chef(シェフ)。調理関連の職種のなかで、就労ビザ側の Core Skills Occupation List と、独立技術移住側の MLTSSL の両方に載っている職種で、卒業後ビザ(subclass 485)の Post-Vocational Education Work stream を使える数少ない選択肢でもあります。「料理が好き」を、就労と長期滞在の設計につなげられる分野です。
| 目指す職種 | Chef(シェフ・ANZSCO 351311)/ Cook(351411)/ Café or Restaurant Manager(141111)/ Chef de Partie・Sous Chef・Kitchen Manager など |
| 中心になる資格 | SIT40521 Certificate IV in Kitchen Management(CRICOS 109633F)。豪州で「Chef」を名乗るための標準的な資格で、ビザ・技能査定の場面でも基準になります。 |
| 標準的な進み方 | Cert IV(1年)→ Diploma of Hospitality Management(0.5年)→ Advanced Diploma(0.5年)の計2年パッケージ。2年あることで subclass 485 の在学期間条件を満たしやすくなります。 |
| ビザとの関係 | Chef 351311 は CSOL(subclass 482/186)と MLTSSL(subclass 189/190/491/485 Post-Vocational)の両方に掲載。Cook・Café or Restaurant Manager は CSOL 側のみ。 |
| 英語条件の目安 | Certificate・Diploma レベルは IELTS 5.5 前後。未達の場合は TAFE NSW の語学コースからのパッケージ入学が使えます。 |
| 働きながら学べるか | 調理は実習時間が長く、学生ビザの就労枠(原則2週48時間)と現場アルバイトの相性が良い分野です。ただし学業優先が前提です。 |
| 向いている人 | 手に職をつけたい/日本の飲食業の労働環境に限界を感じている/将来オーストラリアで就労と滞在を続けたい/独立開業も視野に入れたい方 |
※ 学費・入学時期・開講キャンパスは年度により改定されます。最新の金額は TAFE NSW の発表と当社からのお見積りでご確認ください。
このコース群の目的は、「料理をつくれる人」ではなく「厨房を回せる人」を育てることです。オーストラリアの職業訓練制度(VET)は、産業側が決めた到達基準(Training Package)に沿って設計されており、調理分野では次の3段階で役割が分かれています。
| 資格 | 想定する役割 | 身につく中心的な能力 |
|---|---|---|
| SIT30821 Certificate III in Commercial Cookery (1年・CRICOS 109770H) | Cook(調理担当) | 基礎調理法、food safety、食材別の調理(肉・魚・鶏・野菜)、菓子・パンの基礎、厨房機器の扱い |
| SIT40521 Certificate IV in Kitchen Management (1年・CRICOS 109633F) | Chef(シェフ)/ Chef de Partie | Cert III の全内容+メニュー設計と原価計算、調理オペレーションの計画、食品安全プログラムの策定、人の育成とマネジメント |
| SIT50422 Diploma of Hospitality Management (1年・CRICOS 112061M) | Kitchen Manager/店舗マネージャー | 予算の作成と管理、法的リスク管理、シフト編成、顧客サービス品質の設計、業務オペレーションの監督 |
| SIT60322 Advanced Diploma of Hospitality Management (単独1.5年/パッケージ0.5年・CRICOS 112059E) | 複数店舗の統括/事業計画 | 事業計画、財務、マーケティング、組織づくり。将来の独立開業を見据える層向け |
全 33ユニット=コア27+選択6。選択のうち3つは Group A(Cookery & Catering)から選びます。選択グループは A 調理・ケータリング/B アジア料理/C パティスリー/D フード&ビバレッジ/E 一般。
| ユニットコード | 内容 |
|---|---|
| SITHCCC023 | Use food preparation equipment(調理機器の運用) |
| SITHCCC027 | Prepare dishes using basic methods of cookery(基礎調理法) |
| SITHCCC029 | Prepare stocks, sauces and soups(ストック・ソース・スープ) |
| SITHCCC035 | Prepare poultry dishes(鶏肉料理) |
| SITHCCC036 | Prepare meat dishes(肉料理) |
| SITHCCC037 | Prepare seafood dishes(魚介料理) |
| SITHCCC041 | Produce cakes, pastries and breads(菓子・パン) |
| SITHCCC043 | Work effectively as a cook(調理職としての実務遂行) |
| SITHKOP013 | Plan cooking operations(調理オペレーションの計画) |
| SITHKOP015 | Design and cost menus(メニュー設計と原価計算) |
| SITXFSA008 | Develop and implement a food safety program(食品安全プログラムの策定と運用) |
| SITXHRM009 | Lead and manage people(人の指導とマネジメント) |
※ 代表的なユニットの抜粋です。全ユニットは training.gov.au の SIT40521 リリースファイル(PDF)でご確認いただけます。
全 28ユニット=コア11+選択17。ここからは調理そのものより「店を成立させる仕事」の比重が上がります。コア11ユニットは以下のとおりです。
| ユニットコード | 内容 |
|---|---|
| SITXCCS015 | Enhance customer service experiences(顧客体験の向上) |
| SITXCCS016 | Develop and manage quality customer service practices(サービス品質の設計と管理) |
| SITXCOM010 | Manage conflict(コンフリクト対応) |
| SITXFIN009 | Manage finances within a budget(予算内での財務管理) |
| SITXFIN010 | Prepare and monitor budgets(予算の作成と監視) |
| SITXGLC002 | Identify and manage legal risks and comply with law(法的リスクの管理と法令遵守) |
| SITXHRM008 | Roster staff(シフト編成) |
| SITXHRM009 | Lead and manage people(人の指導とマネジメント) |
| SITXMGT004 | Monitor work operations(業務オペレーションの監督) |
| SITXMGT005 | Establish and conduct business relationships(取引関係の構築) |
| SITXWHS007 | Implement and monitor work health and safety practices(労働安全衛生) |
調理系の資格には、実際の営業厨房での勤務が到達基準として組み込まれています。TAFE NSW は学内のトレーニング・レストランと外部の提携先の双方を使って、この時間を確保します。日本の専門学校の「校内実習中心」とは、ここが最も大きく違う点です。詳細は TAFE NSW のコースページをご覧ください。
コース名だけでは、実際にどの求人に応募できるのかが分かりません。ここでは ANZSCO(豪州・NZ標準職業分類)のコードで整理します。ANZSCO コードは、求人検索・技能査定・ビザ申請のすべてで共通の「職種の背番号」です。
| ANZSCO | 職種名 | 主な資格要件(ANZSCO 上の目安) | このコース群との対応 |
|---|---|---|---|
| 351311 | Chef(シェフ) | AQF Certificate III 以上、または3年以上の関連実務 | SIT40521 Certificate IV in Kitchen Management が標準の対応資格 |
| 351411 | Cook(コック) | AQF Certificate III 以上、または3年以上の関連実務 | SIT30821 Certificate III in Commercial Cookery |
| 141111 | Café or Restaurant Manager | AQF Associate Degree/Advanced Diploma/Diploma、または3年以上の関連実務 | SIT50422 Diploma / SIT60322 Advanced Diploma of Hospitality Management |
| 141311 | Hotel or Motel Manager | 同上 | SIT50422 / SIT60322(宿泊業側に進む場合) |
| 351111 | Baker(ベーカー) | AQF Certificate III 以上 | 製パン専門の別コース(FBP 系)が該当。本コース群では選択ユニットで基礎に触れる程度 |
| 351112 | Pastrycook(パティシエ) | AQF Certificate III 以上 | Patisserie 専門の別コースが該当。Cert IV の選択グループ C で基礎に触れられます |
Seek などの求人票では、ANZSCO のコード名ではなく厨房内の職位で書かれています。対応関係はおおむね次のとおりです。
オーストラリアの就労・移住ビザは、「どのリストに、その職業コードが載っているか」で使えるビザが決まります。調理・ホスピタリティ分野は、この点で職種ごとの差が非常に大きい分野です。
| 職業(ANZSCO) | CSOL (482/186) | MLTSSL (189/190/491/485) | 使える可能性のある subclass | 技能査定機関 |
|---|---|---|---|---|
| Chef 351311 | 掲載 | 掲載 | 482 Core Skills/186 Direct Entry/189/190/491/485 Post-Vocational | TRA(Trades Recognition Australia) |
| Cook 351411 | 掲載 | 非掲載 | 482 Core Skills/186 Direct Entry(州指名や独立移住には使えません) | TRA |
| Café or Restaurant Manager 141111 | 非掲載 | 非掲載 | STSOL のみ掲載(190/491 の州推薦経由)※CSOL・186 Direct Entry・MLTSSL にはいずれも非掲載 | VETASSESS |
| Hotel or Motel Manager 141311 | 掲載 | 非掲載 | 482 Core Skills/186 Direct Entry | VETASSESS |
※ CSOL は Migration (Specification of Occupations—Subclass 482 Visa) Instrument 2024(F2024L01620)、MLTSSL/STSOL/ROL は Migration (LIN 19/051) Instrument 2019(F2019L00278)に基づきます。いずれも随時改定されるため、申請時点の最新版でのご確認が必要です。
オーストラリアのホスピタリティ産業は、観光・移民・外食文化の三つに支えられた大きな雇用の受け皿です。とくにシドニーは、日本食・韓国料理・イタリアン・モダンオーストラリアンが並立する多国籍な外食市場で、「日本人であること」が調理職では実際に強みとして扱われる数少ない分野でもあります。
需給の実勢は年ごとに動きます。当社では特定の年の「人手不足リスト上の評価」を断定的に掲げることはしていません。かわりに、ご自身で確認できる一次情報の場所をお示しします。
オーストラリアの賃金を理解するうえで最も重要なのは、金額そのものより賃金が法令で下支えされているという構造です。飲食店で働く場合、Restaurant Industry Award 2020(MA000119)という産業別の裁定(Award)が最低条件を定めており、雇用主はこれを下回れません。
| 最低賃金 | 職位(Food and Beverage Attendant Grade 1〜5、Cook Grade 1〜5 等)ごとに時給の下限が定められています |
| 労働時間 | フルタイムは週38時間が基準。1日の労働は原則11.5時間を上限とする定めがあります |
| 勤務間インターバル | シフトとシフトの間に最低10時間の休息を確保する定めがあります |
| 割増(Penalty rates) | 土曜・日曜・祝日・深夜の勤務には割増率が適用されます。日曜と祝日の割増は特に大きく、実収入に効きます |
| 時間外 | 週38時間を超える労働には時間外の割増が適用されます |
実際の賃金水準は雇用主・地域・職位で幅がありますので、当社では金額を断定的に掲載しません。かわりに、ご自身で今の相場を確認する方法をお勧めしています。
比較の相手として、日本の飲食・宿泊分野の状況を政府統計で確認します。ここは「オーストラリアの方が良い」と煽るための場所ではなく、何が構造的に違うのかを冷静に見るための場所です。
| 宿泊業・飲食サービス業の所定内給与 | 277.2 千円/月 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」。産業大分類のなかで最も低い水準にあります。 |
| 調理師(job tag) | 職業情報提供サイト job tag の「調理師」ページで、平均年収・有効求人倍率・労働時間が公開されています(厚生労働省 job tag) |
| 人手不足 | 飲食・宿泊は日本国内でも慢性的な人手不足業種であり、求人自体は豊富です。問題は「求人の量」ではなく「賃金と労働時間の水準」にあります。 |
厚生労働省の令和7年版「過労死等防止対策白書」では、重点的に調査・分析を行う業種の一つとして外食産業が挙げられています。長時間労働と深夜勤務が常態化しやすい業種構造が、政策側からも課題として認識されている、ということです。
日本で調理の仕事に就くための国家資格は調理師免許です。取得ルートは二つあります。
重要なのは、日本の調理師免許とオーストラリアの Certificate IV は互いに自動的には認められないという点です。豪州で Chef として技能査定を受ける場合は TRA の基準に沿った評価となり、日本の調理師免許はそれ自体では代替になりません。逆に、豪州の Certificate IV を持って帰国しても日本の調理師免許にはなりません。「どちらで働くつもりか」を先に決めることが、遠回りを避ける最短の方法です。
「日本で調理の専門学校に行く」という選択肢と、正面から比べていただくための情報です。以下は日本を代表する調理師養成施設で、どちらも都道府県知事の指定を受けています。
日本の調理教育の代表的存在で、栄養学と調理を両輪で扱うカリキュラムに特色があります。国内の飲食・ホテル業界への就職ネットワークが厚く、「日本国内でキャリアを積む」前提なら有力な選択肢です。
日本料理・西洋料理・中国料理を体系的に扱う規模の大きい養成施設で、フランス・イタリアの姉妹校を使った海外課程を持つ点が特徴です。「海外で学ぶ」ことを日本の学校経由で実現したい方の比較対象になります。
| 比較の軸 | 日本の調理師専門学校 | TAFE NSW(SIT40521 ほか) |
|---|---|---|
| 学ぶ内容の設計 | 学校ごとにカリキュラムを設計 | 産業側が定めた全国共通の到達基準(Training Package)。同じコード=同じ到達水準 |
| 実習の場 | 校内実習が中心 | 営業している厨房での勤務が到達基準に組み込まれている |
| 資格の通用範囲 | 日本国内(調理師免許) | オーストラリア全州で共通の国家資格。ビザ・技能査定の場面でそのまま使われる |
| 在学中の就労 | アルバイトは可能だが、賃金は日本の水準 | 学生ビザの就労枠内で、Award に下支えされた賃金で働ける |
| 卒業後の滞在 | — | Chef 351311 経由で subclass 485/482/186/189/190/491 の検討余地がある |
| 言語 | 日本語 | 英語。厨房の指示・発注・食品安全書類のすべてが英語 |
| 学歴 | 日本の高校卒業相当が基準です。Diploma/Advanced Diploma に直接入る場合は、下位資格の修了または関連する実務経験が求められることがあります。 |
| 英語(目安) | Certificate・Diploma レベルは IELTS 5.5 前後(各バンドの下限指定あり)。コースと年度により条件が異なるため、必ず最新の TAFE NSW の入学条件ページをご確認ください。 |
| 年齢 | 原則18歳以上。 |
| その他 | 厨房での実習があるため、立ち仕事・長時間の作業に耐えられる健康状態が前提になります。 |
以下は TAFE NSW International が公表しているコース別の学費です。年度により改定されますので、お申し込み時点の正式な金額は必ず当社からのお見積りでご確認ください。
| コース | 期間 | CRICOS | 入学時期 | 公表されている学費(総額) |
|---|---|---|---|---|
| SIT30821 Certificate III in Commercial Cookery | 1年 | 109770H | 2月・7月 | AUD 20,400 〜 |
| SIT40521 Certificate IV in Kitchen Management | 1年 | 109633F | 2月・7月 | AUD 22,900 〜 |
| SIT50422 Diploma of Hospitality Management | 1年(パッケージ時0.5年) | 112061M | 2月・7月(Ultimo は3月・9月も) | AUD 17,300 〜 |
| SIT60322 Advanced Diploma of Hospitality Management | 1.5年(パッケージ時0.5年) | 112059E | お問い合わせください | AUD 25,875(単独)/ 8,625(パッケージ時) |
※ 開講キャンパス:Cert IV は Hamilton・Kingscliff・Kingswood・Ryde・Ultimo・Wollongbar ほか。Diploma は Ultimo・Ryde・Campbelltown・Wollongong ほか。年度により変わります。
※ 上記のほか、教材費・OSHC(留学生健康保険)・生活費・渡航費が別途必要です。当社ではご希望のコースとキャンパスに合わせて、総額の見積りを無料で作成します。
※ ビザの可否は、そのときの法令・職業リスト・州の指名条件・ご本人の状況で変わります。上記は制度の全体像を示すモデルであり、個別の見通しは当社の登録移民代理人がお伺いしたうえでお伝えします。
学歴・職歴・英語力・ご予算・目標時期をうかがって、このコースが現実的かどうかを率直にお伝えします。合わないと判断した場合は、その理由と代わりの選択肢もお出しします。
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