IT は求人の絶対数が多い分野です。ただし「求人が多いこと」と「そのビザに届くこと」は、豪州の IT ではほとんど別の話です。ANZSCO の IT 専門職は大半が skill level 1(学士相当)で、技能査定を行う ACS の評価も学歴を土台に組み立てられています。このページは、その不都合な部分から先に書きます。
この分野は、期待と実態のズレが最も大きい分野の一つです。当社は、資料請求をいただく前に次の5点をお伝えしています。
※ ここに書いたことは、当社が2026年7月時点で公開情報から確認できた範囲です。職業リスト・査定機関の基準・州指名の条件はいずれも随時改定されます。最終的なご判断の前に、必ず最新の情報と、当社在籍の登録移民代理人へのご相談を挟んでください。
| 提供校 | TAFE Queensland(RTO 0275 / CRICOS 03020E / 高等教育 PRV13003) |
| 主なコース | ICT30120 Certificate III in Information Technology(CRICOS 106316K・6か月)/22603VIC Certificate IV in Cyber Security(CRICOS 112094B・1年)/ICT50220 Diploma of Information Technology(CRICOS 107313E・1年・4専攻+General)/HED011 Graduate Certificate in Cyber Security(CRICOS 117456G・6か月)/HED010 Graduate Diploma in Cyber Security(CRICOS 117455H・1年)/HED009 Master of Cyber Security(CRICOS 117454J・1年6か月)/HED008 Master of Cyber Security (Advanced)(CRICOS 117453K・2年) |
| 目指す職種 | Software Engineer(261313)、Developer Programmer(261312)、ICT Security Specialist(262112)、Computer Network and Systems Engineer(263111)、Systems Administrator(262113)、ICT Customer Support Officer(313112)、ICT Support Technicians nec(313199) |
| 最重要ポイント | 261/262/263 番台の ICT 専門職は skill level 1(学士相当)。Diploma 単独で ACS 査定を通そうとすると、職務経験から差し引かれる年数が学士の場合より長くなります。Diploma だけで到達できるのは、実務上は 313 番台のサポート職が中心です。 |
| 313 番台の弱点 | 313112 ICT Customer Support Officer と 313199 ICT Support Technicians nec は、弊社が確認した範囲では MLTSSL に見当たりません。MLTSSL 非掲載であれば、189/190/491 や subclass 485 の Post-Vocational Education Work stream では使えないことになります。 |
| 技能査定 | ACS(Australian Computer Society)。ICT 分野の職業は原則として ACS が査定機関です。 |
| Master まで進むと | subclass 485 は Post-Higher Education Work stream(職業リスト要件なし)で検討できます。加えて、ACS 査定で差し引かれる年数の面でも、学位保有者のほうが有利な設計になっています。 |
| QLD 州指名(BSMQ) | 弊社が確認した範囲では、Queensland Skilled Occupation List に 261311/261312/261313/261399/262112 の5つの ICT 職業が掲載されており、190/491 の双方で検討対象とされています。ただしいずれも skill level 1で、Diploma 単独では届きません。 |
| 開講キャンパス | South Bank(ブリスベン)が中心。Coomera(ゴールドコースト)・Mooloolaba(サンシャインコースト)・Ipswich・Toowoomba・Cairns・Townsville などでも一部の専攻が開講されるとされています。専攻ごとに開講キャンパスが異なります。 |
| 学費(TAFE Queensland 掲載値) | ICT30120=$8,250/22603VIC=$18,800/ICT50220=$23,000(各専攻)。大学院課程は後述の「費用と期間」で、2つの資料の食い違いを併記します。 |
※ CRICOS コース番号・期間・キャンパスは、TAFE Queensland International の価格一覧ページの掲載内容から確認しました。学費は当社が受領した 2026年の料金資料の値です。いずれも改定されることがあります。
TAFE Queensland の IT 分野は、職業教育(VET)の3段階と、高等教育のサイバーセキュリティ大学院課程という、性格の異なる2つの塊で構成されています。まずこの全体像を押さえてください。
| AQF | コース | コード/CRICOS | 期間 | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| AQF3 | Certificate III in Information Technology | ICT30120 / 106316K | 6か月 | IT の入口。サポート業務・基礎的な運用 |
| AQF4 | Certificate IV in Cyber Security | 22603VIC / 112094B | 1年 | サイバー専門の入口。州(VIC)が開発した課程 |
| AQF5 | Diploma of Information Technology | ICT50220 / 107313E | 1年 | VET の最上段。4専攻+General |
| AQF7 | 該当なし学士(Bachelor) | — | — | 留学生向けの IT 学士は確認できませんでした |
| AQF8 | Graduate Certificate in Cyber Security | HED011 / 117456G | 6か月 | 大学院の入口。実務年数での出願経路がある |
| AQF8 | Graduate Diploma in Cyber Security | HED010 / 117455H | 1年 | Graduate Certificate の上位 |
| AQF9 | Master of Cyber Security | HED009 / 117454J | 1年6か月 | subclass 485 の Post-Higher Education Work stream が視野に入る |
| AQF9 | Master of Cyber Security (Advanced) | HED008 / 117453K | 2年 | 研究・応用の比重が高い上位課程 |
IT の基礎を6か月で扱う短期課程です。TAFE Queensland では、この Certificate III が複数のストリーム(学習の方向づけ)に分かれて開講されている点が特徴で、価格一覧ページでは次の4つのストリームと、それぞれの開講キャンパスが示されています。
| ストリーム | 開講キャンパス(掲載値) | 内容の方向 |
|---|---|---|
| Cyber and Networking | South Bank(ブリスベン) | ネットワークとセキュリティの基礎。22603VIC への足がかり |
| Web Development | South Bank(ブリスベン) | Web 制作の基礎。Front End Web Development 専攻への足がかり |
| Generalist IT Support | Cairns、Townsville-Pimlico、Ipswich、Toowoomba | ヘルプデスク・サポート業務。地方キャンパス中心 |
| Foundation | Bracken Ridge、Loganlea、South Bank(ブリスベン) | IT 未経験者向けの土台づくり |
※ ICT30120 の詳細な学習ユニット(コアユニット・選択ユニットのコード一覧)は、training.gov.au のリリースファイルで公開されています。TAFE Queensland がどの選択ユニットを採用しているかは、ストリームとキャンパスによって異なるため、確定した一覧は資料請求時に個別にお取り寄せします。
サイバーセキュリティに特化した Certificate IV です。コードの頭に「22603VIC」と州名が入っているとおり、これは ICT 訓練パッケージの全国資格ではなく、ビクトリア州で開発され、全国的に認められている accredited courseという位置づけの資格です。TAFE Queensland はこれを CRICOS 112094B として留学生向けに開講しています。
開講キャンパスは、価格一覧ページの掲載では Mooloolaba(サンシャインコースト)、South Bank(ブリスベン)、Coomera(ゴールドコースト)、Ipswich、Toowoomba とされています。サイバー分野で、ブリスベン以外の選択肢が最も広いのがこの Certificate IVです。地方区分を意識した計画を立てる場合、ここが数少ない現実的な入口になります。
扱う内容は、脅威と脆弱性の基礎、セキュリティ手順の実施、リスクの評価、インシデントへの対応、ネットワークとシステムの基本的な保護といった領域だとされています。実務レベルとしては、SOC(セキュリティ運用センター)の一次対応やセキュリティ運用の補助にあたる層を想定した資格です。
VET の最上段にあたる Diploma です。TAFE Queensland は、この1つのコードのもとで5つの学習経路を開講しているとされています。学費はいずれも同額($23,000)です。
| 専攻(Specialisation) | 開講キャンパス(掲載値) | 対応しやすい ANZSCO の方向 |
|---|---|---|
| Advanced Networking and Cloud Engineering | 複数キャンパス | 263111 Computer Network and Systems Engineer / 262113 Systems Administrator |
| Advanced Networking and System Administration | Ipswich、Toowoomba | 262113 Systems Administrator / 263111 |
| Advanced Programming | Coomera(ゴールドコースト)、South Bank(ブリスベン) | 261312 Developer Programmer / 261313 Software Engineer |
| Front End Web Development | South Bank(ブリスベン) | 261212 Web Developer / 261312 |
| General(専攻指定なし) | Bracken Ridge、Loganlea | 313112 ICT Customer Support Officer ほか |
ICT50220 は、コアユニット6つ+選択ユニット14つの計20ユニットで構成される資格だと、訓練パッケージ側で定められています。コアユニットには、次のような領域が含まれるとされています。
※ ユニットの正確な名称・改訂番号は training.gov.au のリリースファイル(PDF)が一次情報です。上記は当社が確認した範囲の要約であり、TAFE Queensland が実際に採用している選択ユニット14つの内訳は専攻ごとに異なります。正確なユニット一覧は「確認できなかったこと」に挙げたうえで、資料請求時に個別にお取り寄せします。
TAFE Queensland は高等教育機関としても登録されており(PRV13003)、サイバーセキュリティ分野で4つの課程を留学生向けに開講しているとされています。開講キャンパスはいずれも South Bank(ブリスベン)と Coomera(ゴールドコースト)です。
大学院課程の入口。AQF5 相当の資格+関連実務2年、または関連実務3年でも出願を検討できると案内されています。Diploma 修了者が大学院に進む際の橋になる課程です。
Graduate Certificate の内容を含みつつ、より広い範囲を扱う課程。Master への段階としても位置づけられます。
subclass 485 の Post-Higher Education Work stream が視野に入る最短の課程。この stream は職業リスト掲載の要件がありません。
研究・応用の比重が高い2年課程。在学期間が長いぶん、豪州での就職活動に充てられる時間も長くなります。
※ 大学院課程の入学条件(要求される学歴・実務年数・英語スコア)は課程ごとに異なり、改定されます。上記は当社が公開情報から確認できた範囲の要約です。出願前に必ず最新の条件をご確認ください。
ANZSCO(Australian and New Zealand Standard Classification of Occupations)は、職業ごとにskill level(1〜5)を割り当てています。skill level 1 は「Bachelor degree or higher qualification」、skill level 2 は「AQF Associate Degree/Advanced Diploma/Diploma」を目安とする区分だと説明されています。この区分が、そのまま就労ビザの土俵になります。
| ANZSCO | 職種名 | skill level | ANZSCO 上の資格の目安 | TAFE QLD で現実的に対応する課程 |
|---|---|---|---|---|
| 261313 | Software Engineer(ソフトウェアエンジニア) | 1 | 学士以上、または5年以上の関連実務 | Diploma(Advanced Programming)だけでは不足。学位が実質的な前提 |
| 261312 | Developer Programmer(開発プログラマー) | 1 | 学士以上、または5年以上の関連実務 | 同上 |
| 262112 | ICT Security Specialist(セキュリティ専門職) | 1 | 学士以上、または5年以上の関連実務 | Master of Cyber Security(HED009/HED008)が本筋。Cert IV 単独では届かない |
| 263111 | Computer Network and Systems Engineer | 1 | 学士以上、または5年以上の関連実務 | Diploma(Advanced Networking 系)+長期の実務、または学位 |
| 262113 | Systems Administrator(システム管理者) | 1 | 学士以上、または5年以上の関連実務 | Diploma(Advanced Networking and System Administration)+実務 |
| 261212 | Web Developer(Web 開発者) | 1 | 学士以上、または5年以上の関連実務 | Diploma(Front End Web Development)+実務 |
| 313112 | ICT Customer Support Officer(ヘルプデスク・サポート) | 4 | Certificate II/III 以上、または1年以上の関連実務 | ICT30120(Generalist IT Support)/ICT50220 General で現実的に届く層 |
| 313199 | ICT Support Technicians nec(その他の ICT サポート技術者) | 4 | Certificate II/III 以上、または1年以上の関連実務 | 同上 |
豪州の就労・技術移住ビザは、参照する職業リストがビザごとに違います。IT 分野では、この「リストごとの違い」が特に大きく効きます。まず、どのビザがどのリストを見ているかを整理します。
| CSOL(Core Skills Occupation List) | 法令番号 LIN 24/089 / F2024L01620。subclass 482 Skills in Demand ビザの Core Skills stream が参照します。ANZSCO 2022 版のコード体系で作られています。 |
| 186 Direct Entry のリスト | 法令番号 LIN 24/093 / F2024L01618。subclass 186 Employer Nomination Scheme の Direct Entry stream が参照します。 |
| MLTSSL/STSOL/ROL | 法令番号 LIN 19/051 / F2019L00278。subclass 189/190/491/485 が参照します。ANZSCO 2013 版のコード体系のままです。 |
| 職業(ANZSCO 2013) | CSOL (482 Core Skills) | 186 DE (LIN 24/093) | MLTSSL (189/190/491/485) | 査定機関 |
|---|---|---|---|---|
| 261313 Software Engineer | 掲載 | 掲載 | 掲載 | ACS |
| 261312 Developer Programmer | 掲載 | 掲載 | 掲載 | ACS |
| 263111 Computer Network and Systems Engineer | 掲載 | 掲載 | 掲載 | ACS |
| 262113 Systems Administrator | 掲載 | 掲載 | 要確認 | ACS |
| 262112 ICT Security Specialist | このコードでは 見当たらず | 要確認 | 掲載 | ACS |
| 313112 ICT Customer Support Officer | 要確認 | 要確認 | 見当たらず | ACS |
| 313199 ICT Support Technicians nec | 要確認 | 要確認 | 見当たらず | ACS |
※ 「要確認」は「載っていない」という意味ではなく、弊社が一次資料で最終確認できなかった、という意味です。F2019L00278 の本文を取得しようとしたところ、目次までは表示されるものの、MLTSSL/STSOL/ROL の別表本体を読み取れませんでした。この点は「確認できなかったこと」に正直に挙げています。
職業リストの全体像は ビザ職業リスト(CSOL)の解説ページでもまとめています。あわせて オーストラリアのビザ総合ガイドもご覧ください。
IT 分野のビザは、職業リストに載っているかどうかよりも、ACS(Australian Computer Society)の技能査定を通せるかどうかで決まります。ACS は ICT 分野の職業について査定を行う機関で、この分野で ANZSCO 261/262/263 番台を狙う場合、原則として ACS の査定が必要になります。
ACS の一般的な査定では、提出した学歴が申請職業とどの程度関連しているかによって、職務経験のうち何年分が「査定に数えられない期間」として差し引かれるかが決まる仕組みが採られています。差し引かれた後の残りの年数が、はじめて「skilled employment」として認められる、という設計です。
| 提出する学歴 | 差し引かれる年数の目安 | 意味するところ |
|---|---|---|
| 学士以上で ICT major を含み、申請職業と密接に関連 | 2年 | 実務2年で査定を通せる可能性がある。最短の道筋 |
| 学士以上で ICT major を含むが、申請職業との関連が薄い | 4年 | 実務4年が必要 |
| Diploma/Advanced Diploma(AQF)で申請職業と密接に関連 | 5年 | 実務5年を積んで、はじめて査定に数え始める |
| Diploma/Advanced Diploma で関連が薄い | 6年 | 実務6年が必要 |
※ この差し引き年数の表は、当社が第三者の解説資料も含めて確認した範囲の理解です。ACS の一次ページで最終確認できていません(該当していた URL が現在は表示されなくなっています)。実際の年数は申請時点の ACS の基準によります。この点は「確認できなかったこと」にも挙げています。
卒業後の就労ビザ subclass 485(Temporary Graduate visa)には複数の stream があります。IT 留学で関係するのは次の2つで、この2つは要件がまったく違います。
| 項目 | Post-Higher Education Work stream (Master 修了者) | Post-Vocational Education Work stream (Diploma 修了者) |
|---|---|---|
| 対象となる学歴 | 豪州の高等教育(学士・大学院) | 豪州の職業教育(Certificate III 以上・Diploma 等) |
| 職業リストの要件 | ありません | MLTSSL 掲載職業であることが必要 |
| 年齢制限 | 申請時 35歳以下(一部例外あり) | 申請時 35歳以下 |
| 技能査定 | 不要とされています | MLTSSL 職業についての技能査定が必要 |
| TAFE QLD で該当する課程 | HED009/HED008 Master of Cyber Security、HED010/HED011 も高等教育課程 | ICT30120/22603VIC/ICT50220 |
豪州の移住制度では、郵便番号にもとづいて地域が3つのカテゴリーに分けられているとされています。この区分は subclass 491/494 の対象地域、subclass 485 の地方延長、点数加点などに関わります。
| 区分 | 名称 | クイーンズランド州の主な該当地 | 移住上の扱い |
|---|---|---|---|
| Category 1 | Major Cities | ブリスベン | 地方には含まれません。シドニー・メルボルンと同じ扱い |
| Category 2 | Cities and Major Regional Centres | ゴールドコースト、サンシャインコースト | 地方として扱われるとされています |
| Category 3 | Regional Centres and Other Regional Areas | ケアンズ、タウンズビル、トゥーンバ、ロックハンプトン、マッカイ ほか | 地方として扱われるとされています |
subclass 190(州指名の永住ビザ)と subclass 491(地方の州指名ビザ)では、州政府の指名が必要です。クイーンズランド州では Business and Skilled Migration Queensland(BSMQ)が窓口になっており、指名の対象となる職業を Queensland Skilled Occupation List(QSOL)として公表しています。
クイーンズランド州には、Cairns / Far North Queensland、Townsville、Darling Downs など複数の地域で DAMA(Designated Area Migration Agreement)が結ばれているとされています。DAMA は、地域の労働力不足に応じて、通常の職業リストにない職種や、緩和された要件での受け入れを可能にする枠組みです。
ただし、IT・サイバー分野が各 DAMA の対象職種に含まれているかどうかは、弊社では確認できませんでした。DAMA の対象職種一覧は地域ごとに異なり、公開のされ方も一様ではありません。DAMA を前提にした計画をお考えの場合は、当社在籍の登録移民代理人にご相談ください。
Jobs and Skills Australia が公表している Occupation Shortage List(OSL)は、職業ごとに人手不足かどうかを毎年評価しています。近年の IT 分野について、当社が確認した範囲では、次のような傾向が見られます。
SEEK の職種別の給与ページでは、Software Engineer の平均年収として 年 AUD 11万台〜12万8千台の値が示されています(業種区分により幅があります)。ICT 専門職は、豪州の平均賃金と比べても高い部類に入る職種群です。
ブリスベンは、シドニー・メルボルンに次ぐ規模の IT 求人市場を持つとされる都市です。州政府・連邦政府機関、資源関連企業、金融、そして 2032 年のブリスベン五輪に向けたインフラ関連の投資が、IT 需要の下支えになっていると説明されることが多い都市でもあります。
ただし当社としては、「五輪があるから IT の就職が有利になる」といった説明はしません。個別の求人がどう動くかは、政策や景気、企業の判断に左右されます。確実に言えるのは、ブリスベンはシドニー・メルボルンより求人の絶対数が少なく、その分だけ英語力と実務経験による選別が効きやすい、ということです。
日本では、IT 人材の不足が長く指摘されています。IPA(情報処理推進機構)が公表している調査資料では、IT 人材の「量」の不足を感じている企業の割合が8割を超える水準で推移していると報告されています。経済産業省の調査でも、将来的な IT 人材の需給ギャップが試算されています。
つまり日本国内でも IT は売り手市場であり、これは「豪州で学ぶ意味」を考えるうえで無視できない事実です。日本に戻って就職する前提であれば、日本国内の専門学校・大学で学ぶほうが、費用対効果の面で有利になる可能性は十分にあります。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、職業ごとに平均年収と求人倍率が示されています。当社が確認した値は次のとおりです。
| 職業 | 平均年収(job tag 掲載値) | 有効求人倍率 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| システムエンジニア(基盤システム) | 889.0 万円 | 2.28 倍 | 年収・求人倍率ともに高い。インフラ・基盤領域の希少性 |
| プログラマー | 578.5 万円 | 0.94 倍 | 求人倍率が1倍を下回っています。「プログラマー」という括りでは、求職者のほうが多い状態 |
※ job tag の掲載値は職業分類ごとの集計であり、個人の年収を保証するものではありません。数値は更新されます。
日本で IT の基礎資格として広く知られているのが、IPA が実施する基本情報技術者試験(FE)と応用情報技術者試験(AP)です。セキュリティ分野では情報処理安全確保支援士試験(SC)があります。豪州の資格と比べると、性格がかなり違います。
| 観点 | 日本(FE/AP/SC) | 豪州(ICT50220/22603VIC/Master) |
|---|---|---|
| 性格 | 試験。独学でも受験でき、学歴要件はありません | 課程の修了。在籍して所定のユニットを修了することで得られます |
| 取得までの時間 | 数か月〜1年程度の学習で受験可能 | Cert III 6か月/Cert IV・Diploma 各1年/Master 1年6か月 |
| 費用 | 受験手数料は数千円台。学習費用は選び方次第 | $8,250〜$32,000 台(課程による)+生活費 |
| 豪州のビザとの関係 | ありません。FE/AP/SC は豪州の職業リストや技能査定の要件ではありません | 豪州の学歴として ACS 査定の対象になります |
| 日本での通用度 | 非常に高い。多くの企業が評価対象にしています | そのままでは通用しにくい。実務経験とセットで説明が必要 |
※ 各試験の合格率・受験者数について、IPA の統計ページを確認しましたが、数値が PDF・Excel 形式でのみ提供されており、当社では具体的な数字を読み取れませんでした。この点は「確認できなかったこと」に挙げています。
「日本の専門学校で学ぶ場合と、どう違うのか」を判断していただくために、IT・サイバーセキュリティを扱う日本の専門学校を2校ご紹介します。当社と提携関係はありません。比較のための情報としてご覧ください。
情報処理科、IT スペシャリスト科、サイバーセキュリティ科、AI システム科、ゲームプログラミング科など、IT 系の学科を細かく分けて設置している専門学校です。蒲田・八王子・北海道の3キャンパス体制。
サイバーセキュリティを名前どおりの学科として設置している点は、TAFE Queensland の 22603VIC や大学院課程と比較する際の分かりやすい対比になります。
ゲーム、CG・映像、音楽、カーデザイン、AI・WEB・IT の5分野を扱う専門学校です。東京・大阪・名古屋の3校に加え、パリにも展開しています。
IT 系の学科に加え、クリエイティブ分野を同一校内に併設している点が特徴です。「IT + デザイン」「IT + 映像」といった組み合わせを日本国内で学ぶ場合の比較対象になります。
ここまで不都合な点を中心に書いてきました。そのうえで、それでも豪州で IT を学ぶ意味があるとすれば、それは次の4点だと当社は考えています。
IT を学ぶ先として、TAFE Queensland と TAFE NSW のどちらを選ぶか。当社にいちばん多くいただく質問です。IT 分野に限れば、判断材料ははっきりしています。
| 観点 | TAFE Queensland(ブリスベンほか) | TAFE NSW(シドニーほか) |
|---|---|---|
| 留学生向けの IT 学士 | 確認できませんでした | Bachelor of Information Technology があります(Cyber and Network Security / Data Engineering) |
| サイバーの大学院 | Graduate Certificate/Graduate Diploma/Master/Master (Advanced) の4課程 | 弊社が確認した範囲では、サイバー専門の大学院課程は見当たりません |
| Diploma of IT | ICT50220・4専攻+General・$23,000 | ICT50220 ほか。学費は TAFE NSW の掲載値をご確認ください |
| 地方区分 | ブリスベン=Category 1。ゴールドコースト・サンシャインコースト=Category 2、ケアンズ等=Category 3。IT の一部専攻がこれらの地域で開講 | シドニー=Category 1。地方キャンパスは存在するが、IT 専攻の開講は限定的 |
| 州指名(QSOL/NSW) | QSOL に 261311/261312/261313/261399/262112 の5職業。262112 は州外からも対象 | NSW の指名要件は別途。年度ごとに大きく変わります |
| 生活費 | シドニーより低い水準とされています | 豪州で最も高い水準の都市 |
| 求人の絶対数 | シドニー・メルボルンに次ぐ規模 | 豪州最大。IT 求人の集積地 |
| 日本人の多さ | ゴールドコースト・ケアンズには日本人コミュニティがあります | シドニーは日本人が最も多い都市の一つ |
| Certificate III(ICT30120) | オーストラリアの Year 10 相当の修了。日本でいえば高校1年修了程度が目安とされています |
| Certificate IV(22603VIC) Diploma(ICT50220) | オーストラリアの Year 12 相当の修了。日本の高校卒業が目安とされています |
| Graduate Certificate(HED011) | 掲載ページでは大学院課程の学歴条件が示されていませんでした。AQF5 相当の資格+関連実務2年、または関連実務3年でも出願を検討できると案内されています。個別の確認が必要です |
| Graduate Diploma(HED010) Master(HED009/HED008) | 同上。学士相当の学歴、または相当する実務が求められるのが一般的ですが、正確な条件は弊社では確認できませんでした |
※ 各国の学歴とオーストラリアの Year 10/Year 12 との対応表が、TAFE Queensland の掲載ページで公開されています。日本の高校卒業がどう扱われるかは、この対応表と個別審査によります。
| Certificate III/IV Diploma/Advanced Diploma | IELTS Academic 総合 6.0(各バンド 5.5 以上) |
| Associate Degree | IELTS Academic 総合 6.0(Writing 6.0 以上、他は 5.5 以上) |
| Bachelor | IELTS Academic 総合 6.5(各バンド 6.0 以上) |
| 大学院課程(Graduate Certificate/Diploma/Master) | IELTS Academic 総合 6.5(各バンド 6.0 以上) |
※ TAFE Queensland International の英語条件ページの掲載内容です。コースによってはこれより高い英語条件が設定される場合があると同ページで説明されています。PTE・TOEFL などの換算表も同ページから確認できます。
| コース | コード/CRICOS | 期間 | 学費(総額) |
|---|---|---|---|
| Certificate III in Information Technology | ICT30120 / 106316K | 6か月 | AUD 8,250 |
| Certificate IV in Cyber Security | 22603VIC / 112094B | 1年 | AUD 18,800 |
| Diploma of Information Technology(4専攻+General・いずれも同額) | ICT50220 / 107313E | 1年 | AUD 23,000 |
※ 上記の金額は当社が確認した範囲の値で、改定されます。総額のお見積りは、コース・開始時期・キャンパスをうかがったうえで個別にお出しします。当社は推測の金額をご案内しません。分野横断で学費を比べたい方は TAFE Queensland の学費一覧もあわせてご覧ください。
率直に申し上げると、Diploma 単独では極めて難しいです。482/186 で指名される ICT 専門職(261/262/263 番台)は skill level 1 で、学士相当が目安とされています。技能査定を行う ACS でも、Diploma で申請した場合は職務経験から差し引かれる年数が学士の場合より長くなる設計です。
Diploma で現実的に就ける 313 番台(ヘルプデスク・IT サポート)は、賃金水準の面でも 482 の Core Skills Income Threshold(AUD 79,499)に届かない求人が珍しくありません。「Diploma を1年で取って就労ビザへ」という計画は、当社としてはおすすめしていません。
22603VIC は AQF4 の資格で、262112 ICT Security Specialist(skill level 1)が求める水準には届きません。この資格単独で狙える skill level 1 のサイバー職業は、弊社が確認した範囲ではありません。
ただし無意味というわけではありません。(1) SOC の一次対応など入口の仕事に就くための資格、(2) 大学院に進む前の土台づくり、(3) Mooloolaba・Coomera・Toowoomba など地方区分にあたる地域で学べる選択肢、という3つの価値があります。位置づけを正しく理解して選ぶ資格です。
ありません。弊社が TAFE Queensland の掲載内容で確認した ICT50220 の専攻は、Advanced Networking and Cloud Engineering、Advanced Networking and System Administration、Advanced Programming、Front End Web Development の4つと、専攻指定なしの General です。
TAFE Queensland でサイバーセキュリティを名前どおりに学ぶ場合は、22603VIC Certificate IV in Cyber Security か、大学院の4課程(HED011/HED010/HED009/HED008)のいずれかになります。
IT 分野では、留学生向けの学士課程を確認できませんでした。TAFE Queensland の IT は、Diploma(AQF5)の上が大学院(AQF8/9)という構成になっています。
Diploma 修了者が校内で上を目指す場合、現実的な道は Graduate Certificate in Cyber Security(HED011)への進学です。この課程は「AQF5 相当の資格+関連実務2年」または「関連実務3年」でも出願を検討できると案内されています。実務年数の条件が付くため、Diploma 修了直後にそのまま進めるとは限りません。
学士(AQF7)を経由したい場合は、TAFE NSW の Bachelor of Information Technology や、豪州の他大学が選択肢になります。オーストラリアの大学一覧もご覧ください。
どのビザの話かによって答えが変わります。弊社が確認した範囲では、262112 は MLTSSL(LIN 19/051・ANZSCO 2013 版)に掲載されており、subclass 189/190/491/485 の文脈では有効なコードです。BSMQ の QSOL にも 262112 が掲載されており、州外からの申請も対象とされています。
一方、subclass 482 が参照する CSOL(LIN 24/089)は ANZSCO 2022 版で作られており、262112 というコードは見当たらず、261315/261317/262114〜262118 といった細分化されたコードが並んでいます。
「262112 で申請できます」という説明を受けたら、それがどのビザについての話なのかを必ずご確認ください。
なりません。ブリスベンは指定地方地域の区分では Category 1(Major Cities)にあたり、シドニー・メルボルンと同じ扱いです。地方の優遇を受けたい場合は、Category 2 のゴールドコースト・サンシャインコースト、または Category 3 のケアンズ・タウンズビル・トゥーンバなどで学び、働く必要があります。
TAFE Queensland の IT でいえば、22603VIC は Mooloolaba・Coomera・Toowoomba で、ICT50220 Advanced Programming は Coomera で、大学院課程は Coomera で開講されるとされています。「クイーンズランド州だから地方」ではなく、「どのキャンパスか」で決まります。
当社が2026年7月時点で調べた範囲では、次の事項を一次情報で確認できませんでした。推測で埋めることはしませんので、正直に列挙します。これらはご相談の際に個別に確認いたします。
職業リストの掲載状況は、コース選びの前提そのものです。ご検討中の職業がどのリストに載っているかは、ビザ職業リスト(CSOL)の解説ページで全体像をご確認ください。
学歴・職歴・英語力・ご予算・目標時期をうかがって、このコースが現実的かどうかを率直にお伝えします。合わないと判断した場合は、その理由と代わりの選択肢もお出しします。
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