植物と土に関わる仕事は、オーストラリアでは日本以上に生活に根づいた産業です。ただし「学べること」と「ビザで使えること」の距離が、この分野は特に大きいという現実があります。園芸・造園の主要職種はいずれも MLTSSL(中長期戦略技能職業リスト)に載っておらず、卒業後の subclass 485 Post-Vocational Education Work stream も使えません。このページでは、その線引きを最初に整理したうえで、それでも現実的に残る道筋(雇用主指名・地方就労)まで順にご説明します。
この分野は、パンフレットや検索結果で見かける情報と、実際の制度が食い違いやすい分野です。ご相談をいただく前に知っておいていただきたい点を、不都合なものから順に5つ挙げます。
1. お問い合わせでよく挙がるコースコードのうち、いくつかは実在しない、または別の資格でした。
コードが違うと、ビザ申請時の技能査定でも学歴照合でも通りません。ご検討の際は必ず現行コードでご確認ください。
2. 留学生が学生ビザで入れる園芸・造園系コースは、TAFE NSW では3つだけです。
TAFE NSW が公開している International Student Guide 2026 の「Horticulture & Environmental Management」欄に掲載されているのは、AHC30722 Certificate III in Horticulture、AHC50621 Diploma of Landscape Design、AHC51120 Diploma of Conservation and Ecosystem Management の3コースのみでした。
一方で、TAFE NSW のコース一覧には Certificate III in Landscape Construction(AHC30921)、Certificate III in Arboriculture(AHC30824)、Certificate III in Sports Turf Management(AHC31324)、Certificate III in Parks and Gardens(AHC31024)、Diploma of Horticulture Management(AHC50422)など多数が並びます。しかしこれらの多くはアプレンティスシップ(徒弟制度)を前提とした国内学生向けで、留学生の受け入れ枠を弊社では確認できていません。「AHC30921 を留学生として受けたい」というご希望は、現時点では実現が難しい可能性が高いとお考えください。
3. 園芸・造園の 362xxx 系職種は、すべて MLTSSL に載っていません。
Migration (LIN 19/051) Instrument 2019 を弊社で確認したところ、Gardener (General)・Arborist・Landscape Gardener・Greenkeeper は STSOL(短期技能職業リスト)、Nurseryperson は ROL(地方職業リスト)に載っており、MLTSSL にはひとつも載っていません。
この結果、次の2点が確定します。
4. 2025年の Occupation Shortage List に、園芸・造園の主要職種は不足職種として載っていません。
Jobs and Skills Australia が公表した 2025 Occupation Shortage List では、評価対象 1,022 職種のうち 29%(293職種)が全国的な人手不足と判定されたと報告されています(2024年は33%、2023年は36%)。しかし弊社が確認した範囲では、Gardener (General)・Arborist・Landscape Gardener はいずれも 2025年の同リストに不足職種として掲載されていません。Landscape Architect も全国では「不足なし(No Shortage)」で、州別ではクイーンズランド州のみ「不足」と示されていました。
「人手が足りないから移民が優遇される分野」という説明は、少なくとも 2025年のリスト上では裏づけが取れませんでした。現場に求人があることと、制度上の不足判定があることは別の話です。
5. この分野で唯一 MLTSSL に載っている Landscape Architect(232112)には、Diploma では届きません。
Landscape Architect は MLTSSL 掲載職種(LIN 19/051 別表1・第25項)で、査定機関は VETASSESS です。しかし VETASSESS が公表している評価基準では、AQF の学士(Bachelor)以上に相当する学歴が求められます。AHC50621 Diploma of Landscape Design は AQF レベル5(Diploma)であり、この基準には届きません。
Diploma of Landscape Design は「ランドスケープ・デザイナー」として働くための実務資格であって、「ランドスケープ・アーキテクト」の登録・査定要件を満たす学位ではありません。この2つは名前が似ていますが、ビザ上はまったく別の扱いです。
では、この分野に来る意味はどこにあるのか。ここまで否定的な事実を並べましたが、それでもこの分野を選ぶ方には、次のような現実的な道筋が残ります。
「永住が取れる分野です」とは申し上げません。「取れないルートと、まだ残っているルートを最初に分けてお伝えする」ことが、この分野では最も誠実な案内だと弊社は考えています。
| 主なコース | AHC30722 Certificate III in Horticulture(1年・CRICOS 114620B)/AHC50621 Diploma of Landscape Design(1.5年・CRICOS 112501C) |
| キャンパス | いずれも Ryde(シドニー北西部の園芸系キャンパス)。入学は 2月・7月。 |
| 目指す職種 | Gardener (General)(ANZSCO 362211)/Arborist(362212)/Landscape Gardener(362213)/Greenkeeper(362311)/Nurseryperson(362411)/Landscape Designer。上位に Landscape Architect(232112)。 |
| 最重要ポイント | 362xxx 系はすべて MLTSSL 非掲載。したがって subclass 189 も、subclass 485 の Post-Vocational Education Work stream も使えません。現実的なのは 482(雇用主スポンサー)/190・491(州指名)のルートです。 |
| CSOL(482・186DE) | Arborist・Tree Worker・Landscape Gardener・Irrigation Technician・Nurseryperson・Landscape Architect は掲載あり。Gardener (General) と Greenkeeper は掲載なし。 |
| 技能査定 | 362xxx 系は TRA(Trades Recognition Australia)、232112 Landscape Architect は VETASSESS。TRA は「AQF III 相当の資格+実務3年(うち直近36か月に12か月)」という水準が公表されています。 |
| 2026年 学費(公表値) | AHC30722:14,950 AUD(TAFE NSW International サイトでは 14,950〜15,400 AUD のレンジ表記)/AHC50621:29,125 AUD(同 29,125〜30,000 AUD)。別途、制服・道具・教材費として 300〜1,000 AUD 程度が案内されています。 |
| 地方(regional) | subclass 491 は STSOL・ROL 掲載職種も対象になり得るため、この分野では地方就労が最も現実的です。ただし州の指名が必須で、NSW の 491 は 2026年6月30日までのプログラム年度分の受付が終了していると州政府が案内しています。 |
| 日本との比較 | 日本の造園工の平均年収は 360.8万円(厚生労働省 job tag)。豪州側は Gardener 平均時給 35.91 AUD、Arborist 平均年収 78,507 AUD などの民間集計値が公表されています(いずれも出典は後述)。 |
上記はいずれも 2026年7月時点で弊社が公開情報から確認した内容です。職業リスト・学費・州指名の条件は随時改定されますので、お申し込み前に必ず最新情報をご確認ください。
training.gov.au の公開ファイル(Release 1・2023年1月25日)によれば、この資格は 17ユニット(コア11+選択6)で構成されます。選択6ユニットのうち3つは指定リストから、残り3つは指定リストまたは他の承認済みトレーニングパッケージから選ぶ形です。
内容は「庭を美しくする」というよりも、薬剤・機械・土壌・灌水・病害虫といった、屋外で植物を管理するための技術一式です。日本の造園の「意匠」寄りの教育と比べると、安全管理と薬剤取扱いの比重が明確に高いのが特徴です。
| ユニットコード | ユニット名 | 内容の要点 |
|---|---|---|
| AHCCHM304 | Transport and store chemicals | 農薬・薬剤の運搬と保管 |
| AHCCHM307 | Prepare and apply chemicals to control pest, weeds and diseases | 病害虫・雑草防除のための薬剤調製と散布 |
| AHCIRG346 | Operate pressurised irrigation systems | 加圧灌水システムの運用 |
| AHCMOM304 | Operate machinery and equipment | 機械・器具の操作 |
| AHCPCM308 | Identify and select plants | 植物の同定と選定 |
| AHCPGD309 | Perform specialist amenity pruning | アメニティ樹木の専門的剪定 |
| AHCPMG301 | Control weeds | 雑草管理 |
| AHCPMG302 | Control plant pests, diseases and disorders | 植物の病害虫・生理障害の管理 |
| AHCSOL304 | Implement soil improvements for garden and turf areas | 庭園・芝生の土壌改良 |
| AHCWHS302 | Contribute to workplace health and safety processes | 労働安全衛生プロセスへの寄与 |
| AHCWRK320 | Apply environmentally sustainable work practices | 環境配慮型の作業実践 |
上表はコアユニット11個です。選択6ユニットは学校・学期ごとに開講内容が変わりますので、確定した組み合わせは TAFE NSW の各期の案内でご確認ください。出典:training.gov.au の AHC30722 リリースファイル(PDF)。
TAFE NSW International のコースページでは、この資格の進路として Gardener/Horticulturist/Landscape Gardener/Nursery Worker が挙げられていることを弊社で確認しました。
training.gov.au の公開ファイル(Release 1・2022年2月16日)によれば、12ユニット(コア6+選択6)で構成されます。Certificate III が「作業する人」の資格だとすれば、こちらは「図面を描き、敷地を読み、設計として提案する人」の資格です。CAD による作図が正式にコアユニットに入っている点が、日本の造園系専門学校のカリキュラムとの分かりやすい違いのひとつです。
| ユニットコード | ユニット名 | 内容の要点 |
|---|---|---|
| AHCDES505 | Prepare a landscape design | ランドスケープ設計案の作成 |
| AHCDES506 | Design for construction of landscape features | 施工を前提とした造作物の設計 |
| AHCDES507 | Produce drawings for landscape design projects using CAD software | CAD による設計図面の作成 |
| AHCDES508 | Design sustainable landscapes | 持続可能性を織り込んだ設計 |
| AHCDES509 | Assess landscape sites | 敷地調査・評価 |
| AHCPCM511 | Specify plants for landscapes | ランドスケープのための植栽仕様の決定 |
TAFE NSW International のコースページでは、進路として Landscape Designer/Landscape Gardener が挙げられており、修了後の進学先として職業教育の上位資格、TAFE NSW の学位課程、および単位認定のある提携大学が示されています。ただしどの大学にどれだけの単位が認められるかは個別判断ですので、進学を前提に計画される場合は事前確認が必要です。
留学生として選べない園芸・造園系コースについて
TAFE NSW の園芸・造園分野には、以下のような資格が並んでいます。参考として挙げますが、いずれも International Student Guide 2026 の掲載対象外であり、留学生の受け入れを弊社では確認できていません。
特に AHC30921 Certificate III in Landscape Construction は、TAFE NSW の案内上、原則としてアプレンティスシップ経由(雇用主が訓練計画を提出する形)または個別問い合わせによる入学とされており、ホワイトカードの取得が必須と示されています。造園施工の技能査定(TRA)で求められるのはこの資格であるにもかかわらず、留学生が学生ビザで直接取りに行きにくい、というのがこの分野の構造的な難しさです。
AHC51120 Diploma of Conservation and Ecosystem Management について
留学生が入れる3コースのうち、残る1つが自然保護・生態系管理の Diploma(CRICOS 104850D・1年・Ryde)です。園芸・造園とは職種の方向性が異なるため、このページでは扱いません。同分野については TAFE NSW 環境マネジメントのページをご覧ください。
ANZSCO(オーストラリア・ニュージーランド標準職業分類)における、この分野の主な職種は次のとおりです。skill level は 1 が最も高く、5 が最も低い区分です。
| ANZSCO(2013) | 職種名 | skill level | 主な仕事の内容 | 到達に必要なもの |
|---|---|---|---|---|
| 362211 | Gardener (General) (造園・庭園管理) | 3 | 庭園・公園・施設緑地の植栽管理、剪定、芝生管理、灌水設備の維持 | AHC30722 で直接カバーされる中心職種 |
| 362212 | Arborist (樹木医・アーボリスト) | 3 | 樹木の健全度診断、高所での剪定・伐採、リスク評価 | AHC30824 Certificate III in Arboriculture が前提。AHC30722 だけでは足りません |
| 362213 | Landscape Gardener (造園工) | 3 | 設計に沿った造園の施工、擁壁・舗装・構造物の設置と植栽 | 技能査定上は AHC30921 Certificate III in Landscape Construction が求められます |
| 362311 | Greenkeeper (グリーンキーパー) | 3 | ゴルフ場・スポーツ施設の芝の造成と維持管理 | AHC31324 Certificate III in Sports Turf Management 系 |
| 362411 | Nurseryperson (苗木生産・園芸店) | 3 | 苗木・鉢物の育成、増殖、出荷管理、園芸店での顧客対応 | AHC31124 Certificate III in Nursery Operations 系。AHC30722 修了者が Nursery Worker として就く例も案内されています |
| 232112 | Landscape Architect (ランドスケープ・アーキテクト) | 1 | 公共空間・都市開発における景観の計画・設計、環境影響の検討 | 学士以上。Diploma of Landscape Design では届きません |
ANZSCO 2022(OSCA)改定に伴い、一部の職種はコード番号が変更されています。詳細は次のセクション③で扱います。
ご相談で最も誤解が多いのがこの2つです。
したがって「Diploma of Landscape Design を修了すれば Landscape Architect として査定を受けられる」という理解は、成り立ちません。Landscape Architect を目指す場合は、学士課程への進学が別途必要になります。
Jobs and Skills Australia が公表している職業プロフィール(Gardeners・ANZSCO 3622)では、就業者 90,300人のうちCertificate III / IV 保有者が 37.6%(全職種平均 19.5%)、学士以上は 8.6%(同 35.4%)と示されています。学位よりも実技資格が効く分野であることが、統計上もはっきり出ています。就業者の中央年齢は39歳、州別では NSW 27.1%、VIC 26.0%、QLD 20.6% です。
一方 Landscape Architects(232112)の職業プロフィールでは、就業者は 3,800人と小規模で、学士 48.1%・大学院/グラデュエートディプロマ等 32.9% と、学歴構成がまったく異なります。州別では VIC 33.6%、NSW 32.4%、QLD 15.9% です。
先に、コード体系のややこしさをご説明します。
現在のオーストラリアのビザ制度では、参照している職業リストによって ANZSCO のコード体系が違います。
同じ職種なのに書類上のコードが違う、という状況が起きます。検索して出てきたコードが自分の見ているリストのものかどうか、必ず確認してください。特に Arborist と Landscape Gardener は、この番号のずれが最も紛らわしい2職種です。
| 職種 | ANZSCO 2013 | CSOL (482 Core Skills/186 DE) | MLTSSL | STSOL | ROL | 査定機関 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Gardener (General) | 362211 | 非掲載該当なし | 非掲載 | 掲載別表2・第173項 | 非掲載 | TRA |
| Arborist | 362212 | 掲載CSOL 362511(第392行) | 非掲載 | 掲載別表2・第174項 | 非掲載 | TRA |
| Landscape Gardener | 362213 | 掲載CSOL 362711(第394行) | 非掲載 | 掲載別表2・第175項 | 非掲載 | TRA |
| Greenkeeper | 362311 | 非掲載該当なし | 非掲載 | 掲載別表2・第176項 | 非掲載 | TRA |
| Nurseryperson | 362411 | 掲載CSOL 362411(第391行) | 非掲載 | 非掲載 | 掲載別表3・第65項 | TRA |
| Landscape Architect | 232112 | 掲載CSOL 232112(第99行) | 掲載別表1・第25項 | 非掲載 | 非掲載 | VETASSESS |
| Tree Worker | 該当コードなし | 掲載CSOL 362512(第393行) | LIN 19/051 の各表には対応する職種名を確認できませんでした | 未確認 | ||
| Irrigation Technician | 該当コードなし | 掲載CSOL 362712(第395行) | LIN 19/051 の各表には対応する職種名を確認できませんでした | 未確認 | ||
出典:Core Skills Occupation List(Department of Home Affairs 公開 PDF)、Migration (LIN 19/051) Instrument 2019(F2019L00278・2026年3月28日時点の編集版)。CSOL の列見出しは「ANZSCO code」ですが、収録されているコードは ANZSCO 2022(OSCA)に沿ったものです。項番・行番号は弊社が読み取った時点のものであり、改定により変動します。
読み取っていただきたい要点を3つに絞ります。
| ビザ | 参照するリスト | この分野での適用可否 |
|---|---|---|
| subclass 482 Skills in Demand (Core Skills stream) |
CSOL | 一部可Arborist・Tree Worker・Landscape Gardener・Irrigation Technician・Nurseryperson・Landscape Architectは対象になり得ます。Gardener (General)・Greenkeeper は対象外です。雇用主が承認スポンサーであること、および給与が所定の最低賃金基準(Core Skills Income Threshold)以上であることが必要です。 |
| subclass 186 Employer Nomination Scheme (Direct Entry stream) |
LIN 24/093(CSOL を参照) | 条件付き186 Direct Entry の職業指定は CSOL を参照する構成になっており、対象職種は 482 と同じ範囲になるものと理解しています。ただし弊社では LIN 24/093(F2024L01618)の条文全文までは確認できておらず、断定はいたしかねます。186 DE は通常3年以上の実務経験と技能査定が求められる点にもご留意ください。 |
| subclass 189 Skilled Independent |
MLTSSL のみ | 原則不可Landscape Architect(232112)を除き、この分野の職種では申請できません。 |
| subclass 190 Skilled Nominated(州指名) |
MLTSSL + STSOL | 条件付きLandscape Architect・Gardener (General)・Arborist・Landscape Gardener・Greenkeeper は制度上の対象範囲に入ります(Nurseryperson は ROL のため対象外)。ただし実際に指名されるかどうかは各州が独自に定める指名リスト次第で、州のリストは連邦リストよりはるかに狭いのが通例です。 |
| subclass 491 Skilled Work Regional(地方州指名) |
MLTSSL + STSOL + ROL | 最も現実的6職種すべてが制度上の対象範囲に入ります。この分野で永住を視野に入れる場合、実質的にここが主戦場です。ただし州・準州の指名が必須です。 |
| subclass 485 Temporary Graduate (Post-Vocational Education Work stream) |
MLTSSL | 不可このストリームは MLTSSL 掲載職種の指名が要件です。AHC30722 も AHC50621 も、指名できる MLTSSL 職種につながりません。年齢35歳以下(香港・BNO 旅券保持者は50歳以下)という別要件もありますが、そもそも職種要件で満たせません。 |
| subclass 494 Skilled Employer Sponsored Regional |
地方雇用主指名の職業リスト | 未確認地方の雇用主指名ビザですが、対象職業リストにおけるこの分野の各職種の掲載状況を、弊社では今回確認できませんでした。 |
subclass 485 について、もう少し具体的に。
Post-Vocational Education Work stream は、一般に次の条件が案内されています(弊社が確認したのは移民代理店等の第三者による解説で、内務省ページ本文までは取得できませんでした)。
いずれにせよ、園芸・造園の 362xxx 系職種は MLTSSL 非掲載のため、3番目の条件で止まります。「TAFE を出れば卒業ビザ」という一般論は、この分野には当てはまりません。
482/186/190/491 のいずれのルートを取るにしても、技能査定(Skills Assessment)を避けて通ることはできません。この分野は、ここが最大の壁になります。
Landscape Gardener(362213)の査定について、弊社が確認した水準は次のとおりです。
ここに深刻なねじれがあります。査定で求められる AHC30921 Certificate III in Landscape Construction は、留学生が学生ビザで入りにくいコースです。したがって「Cert III in Horticulture を出て Landscape Gardener で査定を受ける」という筋書きは、そのままでは通りません。実務経験を積みながら、後から不足資格を追加取得するという段取りが必要になります。
上記の要件と、査定にかかる費用(AQF III 取得段階と TRA 申請料)に関する具体的な金額は、豪州の移民支援事業者が公開している解説で確認したものです。TRA の公表資料そのものでは弊社は確認できていませんので、実際の申請前に必ず TRA の案内をご確認ください。
VETASSESS が公表している評価基準では、次の水準が求められます。
オーストラリアの業界団体である AILA(Australian Institute of Landscape Architects)も、VETASSESS の基準を支持する立場を示しています。Diploma of Landscape Design(AQF レベル5)はこの学位要件を満たしません。
ここまでお読みいただくと、都市部での永住ルートがかなり細いことがお分かりいただけると思います。この分野で残されている道のうち、最も可能性があるのが地方(regional Australia)で働き、subclass 491 を目指すルートです。理由を整理します。
NSW の 491 について、弊社が確認した時点の状況をそのままお伝えします。
NSW 州政府は、subclass 491 の Pathway 1 および Pathway 3 について、2026年6月30日に終了するプログラム年度分の新規申請受付を終了したと案内しています(割当枠に達したため)。
Pathway 1 の条件として公表されているのは、おおむね次の内容です。
注目すべきは、Pathway 1 の申請者は NSW Regional Skills List による職種の制限を受けないと案内されている点です。つまり職種リストに載っていなくても、地方 NSW で実際に6か月働いていれば道が開く構造になっています。ただし枠が閉じていれば、その年度は申請できません。
園芸・造園の各職種が NSW の指名リストに掲載されているかどうかは、弊社では確認できませんでした。また各州・準州はそれぞれ独自の要件と枠を持っており、NSW 以外の州を検討する余地もあります。最新の受付状況は必ずご自身でもご確認ください。
誠実にお伝えすると、地方就労には次の負担が伴います。
それでも、この分野で腰を据えて数年働く意思がある方にとっては、地方は都市部よりはるかに見通しの立つ場所です。「シドニーで園芸を学んで、シドニーで永住」という前提を外せるかどうかが、この分野では分岐点になります。
この分野の賃金には、大きく3つの「層」があります。法定の最低基準となるアワード(Award)、民間求人サイトの集計値、そして専門性の高い職種の実勢です。順に見ていきます。
園芸・造園サービス業に適用される裁定(Award)です。2025年7月1日発効として公表されている時給は次のとおりです。カジュアル(臨時雇用)の時給には25%のローディングが含まれます。
| レベル | 常用(時給・AUD) | カジュアル(時給・AUD) | 目安 |
|---|---|---|---|
| Introductory | 24.28 | 30.35 | 入職直後の未経験者 |
| Level 1 | 24.95 | 31.19 | 基礎的な作業 |
| Level 2 | 25.85 | 32.31 | 一定の経験を要する作業 |
| Level 3 | 27.00 | 33.75 | Certificate III 相当の技能 |
| Level 4 | 28.12 | 35.15 | 高度な技能・小規模な指揮 |
| Level 5 | 29.00 | 36.25 | 指導的立場 |
出典は Award の内容を掲載している賃金情報サイトです。Fair Work Ombudsman のサイトは弊社の環境から直接参照できず、一次資料での最終確認ができていません。実際の適用にあたっては Fair Work Ombudsman の案内をご確認ください。また、この Award がすべての園芸・造園の雇用に適用されるとは限らず、雇用形態や事業内容によって適用される Award が異なる場合があります。
| 職種 | 集計値 | サンプル数・更新時点 | 出典 |
|---|---|---|---|
| Gardener | 平均 時給 35.91 AUD | 861件・2026年7月19日更新 | Indeed Australia |
| Arborist | 平均 年収 78,507 AUD | 115件・2026年7月6日更新 | Indeed Australia |
| Arborist | 75,000〜85,000 AUD(アデレード 114,146/シドニー 82,500/ブリスベン 85,000) | 2026年5月時点 | SEEK |
| Landscape Technician (Landscaper) | 平均 年収 80,068 AUD(キャンベラ 80,397〜ゴールドコースト 142,918) | 227件・2026年7月15日更新 | Indeed Australia |
| Landscape Architect | 平均 年収 94,122 AUD | 80件・2026年7月12日更新 | Indeed Australia |
これらの数字の読み方について、注意点を3つ。
Jobs and Skills Australia の職業プロフィールによれば、Gardeners(ANZSCO 3622)の就業者は 90,300人、中央年齢39歳。学歴構成は Certificate III / IV が 37.6%、Year 10〜12 が 39.2%、学士以上は 8.6% です。将来の見通しとしては約3,000人分のポジション増が示されていましたが、この数値がどの期間を対象としたものか、弊社では特定できませんでしたので、参考値としてお受け取りください。
Landscape Architects(232112)は就業者 3,800人と非常に小さな職種で、パートタイム比率は29%です。VIC・NSW の2州で就業者の3分の2を占めます。小さな職種は、求人の絶対数も少ないという意味です。
就職活動で実際に効くもの。この分野で採用側が見るのは、多くの場合、学歴よりも 運転免許(現場を回るためほぼ必須。トレーラー牽引ができると評価が上がります)、ホワイトカード(建設現場に入る作業がある場合に必要な安全教育修了証)、薬剤取扱いの資格(AHC30722 のコアユニットが土台になります)、チェーンソー・小型機械の運転技能(アーボリスト方面で特に重視されます)、そして現場で通じる英語(安全指示を確実に理解できることが、屋外の危険作業では採用条件になります)です。
日本に戻る、あるいは日本での経験を持って渡航する方のために、日本側の状況も整理します。
| 平均年収 | 360.8万円(厚生労働省 job tag「造園工」) |
| 月間労働時間 | 167時間(同上) |
| 就業者数 | 122,810人(2020年国勢調査・同上) |
| 民間求人集計 | 平均年収 約412万円(月給換算34万円、初任給21万円)。アルバイト・パートの平均時給1,024円、派遣社員1,434円。ボリュームゾーンは298〜355万円、全体では298〜748万円。地域差は大阪府439万円(最高)〜高知県315万円(最低)。求人ボックス 給料ナビ「造園」・2023年8月時点の掲載求人ベース。 |
| 学歴要件 | job tag によれば、造園工に学歴要件はありません。 |
求人ボックスについては、検索結果の要約表示で「454万円」「時給1,197円」という別の数値も確認しており、ページ本文の記載と食い違っていました。どちらが正しいか弊社では判断できませんので、両方の存在を記した上で、本文側の数値を表に採用しています。
厚生労働省 job tag による造園工の仕事内容は「日本庭園や公園などの庭園やゴルフ場等の緑地を設計し、工事を指揮監督するとともに自ら作業を行い、完成後はその維持管理を行う」と説明されています。設計・施工・維持管理を一人が通しで担うという記述は、オーストラリアの職種分化(デザイナー/ガーデナー/アーボリスト/グリーンキーパーが別職種)との対比で興味深い点です。
2024年に受検資格の改正が行われたとされていますが、その具体的な内容は弊社の確認した資料に記載がなく、確認できていません。受検をご検討の際は、実施機関の最新の案内をご確認ください。また、造園施工管理技士の平均年収に関する公的統計は、弊社では見つけられませんでした。
日本とオーストラリアの、制度としての一番大きな違い。
日本では、造園業で責任ある立場に就くために「国家資格 + 長い実務年数」が必要です。1級造園施工管理技士は、大学の指定学科を出ていても実務3年、高卒なら10年です。資格が階層化され、実務年数がゲートになっている構造です。
オーストラリアでは、Certificate III という職業訓練資格が実務の中核資格として機能し、その上に Diploma(設計)、さらに学士(ランドスケープ・アーキテクト)という別レイヤーが乗ります。実務年数がゲートになるのは、むしろビザの技能査定の場面です。
つまり日本は「国内で昇っていくのに年数が要る」、オーストラリアは「国内で働き始めるのは早いが、在留資格を得るのに年数が要る」という違いです。どちらが楽ということではありません。
日本で同じ分野を学ぶ場合の選択肢として、実在を確認できた専門学校を2校ご紹介します。TAFE NSW との比較検討の材料としてお使いください。弊社はこれらの学校の代理店ではなく、出願の取扱いもしておりません。
花き生産・野菜生産・グリーンコーディネート・フラワーコーディネートなど、園芸系の複数コースを持つ学校の中に造園コースが置かれています。東京都千代田区西神田には系列の東京テクノホルティ園芸専門学校があります。
取得を目指せる資格として案内されているもの:造園技能士、造園施工管理技士補(1級・2級)、小型移動式クレーン運転技能講習修了、玉掛技能講習修了、フルハーネス型墜落制止用器具特別教育修了、刈払機取扱作業者。
学費については、弊社が同校のサイトを確認した範囲では金額の記載を確認できませんでした。
テクノ・ホルティ園芸専門学校 造園コース
校名のとおり、庭園のデザインを軸に据えた専門学校です。厚生労働省の技能検定指定校として案内されています。TAFE NSW の Diploma of Landscape Design と学ぶ方向性が最も近い日本の学校のひとつです。
取得を目指せる資格として案内されているもの:造園技能士、園芸装飾技能士、フラワーデザイナー関連資格。
学費総額は245万円と紹介されていますが、この数字の出典は第三者の学校情報サイト(みん専)であり、同校のサイト上での学費の記載は弊社では確認できていません。最新の学費は同校に直接ご確認ください。
日本ガーデンデザイン専門学校 ガーデンデザイン科 / みん専(第三者情報サイト)の同校ページ
日本の学校と TAFE NSW を比べるときの視点。
| 観点 | 日本の造園・園芸 | オーストラリアの Horticulture / Landscape |
|---|---|---|
| 職種の分かれ方 | 「造園工」が設計・施工・維持管理を通しで担う想定(厚労省 job tag の記述) | Gardener/Landscape Gardener/Arborist/Greenkeeper/Nurseryperson/Landscape Architect が明確に別職種 |
| 中核資格 | 造園技能士(技能検定)・造園施工管理技士(建設業法) | Certificate III(AQF レベル3)が実務の中核。上に Diploma・学士 |
| 資格取得までの年数 | 1級造園施工管理技士は大卒指定学科でも実務3年、高卒指定学科は10年 | Certificate III は1年。実務年数はビザの技能査定で問われる |
| 気候・植生 | 四季と落葉樹中心。剪定と仕立ての伝統技法 | 乾燥・高温・在来種中心。水管理(灌漑)と防火が設計思想の中心 |
| カリキュラムの重心 | 意匠・和風庭園技法・施工管理 | 薬剤取扱い・機械操作・土壌改良・灌漑・労働安全衛生。Diploma では CAD が正式なコアユニット |
| 就労ビザ | — | 482/190/491 が中心。189・485(Post-Vocational)は使えない |
1. 水と乾燥の設計思想。オーストラリアの造園は、慢性的な水不足と山火事リスクを前提に組み立てられています。AHC30722 のコアに「加圧灌水システムの運用」が、AHC50621 のコアに「持続可能なランドスケープの設計」が入っているのはそのためです。気候変動下で日本の造園も避けて通れなくなる領域を、先に体系立てて学べるという点は、実質的な価値だと考えます。
2. CAD と設計プロセスの標準化。AHC50621 では CAD による作図がコアユニットとして正式に位置づけられ、敷地評価・植栽仕様・施工図がひと続きの工程として教えられます。「誰が読んでも施工できる図面を出す」ところまでが資格の範囲とされている点は、実務者としての汎用性につながります。
3. 安全衛生の作法。薬剤の運搬・保管・散布、機械操作、労働安全衛生プロセスへの寄与が、それぞれ独立したコアユニットになっています。屋外作業を安全に組み立てる思考は、どの国に戻っても使えます。
逆に、期待しない方がよいこと。
TAFE NSW International の入学条件は、コース・レベル・出身国ごとに定められています。この2コースについての正確な学歴条件・英語スコアの具体値を、弊社では今回のページ作成時点で確認できませんでした。ご検討の際は、弊社から最新の条件をお取り寄せしてお伝えします。
TAFE NSW の職業教育コースは、一般に IELTS 5.5 前後(Certificate III)から 6.0 前後(Diploma)が英語条件の目安とされていますが、AHC30722・AHC50621 について公表されている具体値は、弊社では確認できていません。推測値を書くことは避けます。
英語スコアが足りない場合の考え方。
TAFE NSW には併設の語学センターがあり、シドニーの Ultimo キャンパスには Sydney Institute TAFE English Centre(SITEC)が置かれています。ここで一般英語や進学英語(EAP)を学び、規定の修了水準に達したうえで本コースに進むという組み立てが可能な場合があります。
詳しくは TAFE NSW の語学コース(Ultimo・SITEC)のページ、および 語学留学のページをご覧ください。
語学コース修了で本コースの英語条件が免除されるかどうか、また何週間必要かは、入学時点の英語力と TAFE NSW の定めによります。「語学に通えば必ず入れる」とは限りません。弊社では、まず現在の英語力を確認したうえで、必要な期間の見立てをお伝えしています。
この分野の学費については、弊社が確認した情報源によって数字が異なりました。どれが正しいと断定はせず、確認できたものをすべて併記します。
| 情報源 | AHC30722 Certificate III in Horticulture | AHC50621 Diploma of Landscape Design |
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| International Student Guide 2026 (TAFE NSW 公開 PDF) |
14,950 AUD/1年/CRICOS 114620B/Ryde/入学2月・7月 | 29,125 AUD/1.5年/CRICOS 112501C/Ryde/入学2月・7月 |
| TAFE NSW International のコースページ | 14,950〜15,400 AUD(レンジ表記) | 29,125〜30,000 AUD(レンジ表記) |
| 別途費用として案内されているもの | 制服・道具・教科書・材料費として 300〜1,000 AUD 程度 | |
弊社サイト内の旧ページとの数字の食い違いについて。
弊社サイトには TAFE NSW 園芸・植物分野の従来ページがあり、そちらには Certificate III in Horticulture 11,690 AUD(CRICOS 093764G)、Diploma of Horticulture 16,500 AUD(093772G)、Diploma of Landscape Design 24,000 AUD(093762K)といった数値と、旧 CRICOS コードが掲載されています。
これらは作成時点の情報であり、CRICOS コード・学費のいずれも現在の公表値とは異なります。従来ページは分野全体の概観としてご覧いただき、金額とコードについては本ページをご参照ください。
学費以外にかかる費用としては、次のものがあります。金額は個々の条件で変わりますので、推測値は記載せず、お見積りでお示しします。
費用の総額の見立てをご希望の場合は、留学費用シミュレーションや留学プランのご案内もご利用いただけます。学生ビザの手続きについては 学生ビザサポートのご案内、学生ビザの取得についてのページをご覧ください。
このページを作成するにあたって調べたものの、公開情報から確認できなかった項目を、正直に列挙します。ご相談の際にこれらが必要になる場合は、弊社から個別に照会いたします。
学歴・職歴・英語力・ご予算・目標時期をうかがって、このコースが現実的かどうかを率直にお伝えします。合わないと判断した場合は、その理由と代わりの選択肢もお出しします。
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